私の心情(226)―お金との向き合い方77-新NISAで35-39歳と55₋59歳の買いと売りに注目
家計調査における有価証券売買動向
3月8日に2024年1月の家計調査が発表されました。2021年から折々に紹介している家計調査における年代別有価証券売買額の動向(注*)ですが、2024年1月のデータは新NISAがスタートした月として注目していました。家計調査は、月次調査であることから毎月のぶれが大きく、1か月間の数字で判断することは難しいのですが、やはり新NISAの初月の動向はちょっと気になります。
(注*)過去の関連コラムは、2021年6月15日付け「私の心情(80)―若年層における投資の広がりと懸念」、2021年10月2日付け「私の心情(97)―加速する若年層の投資とその売却」、2023年11月24日付け「私の心情(212)-投資の主体が40₋50代に移ってきたか?」
30代後半の購入額増加が顕著
図表1(購入額)と図表2(売却額)は2023年1月から13か月のデータですが、2024年1月の数値の特徴は、
- 有価証券購入額の平均額は前年比2倍、前月比ではほぼ横ばいと高水準を維持している、
- 年代別にみると35‐39歳と55‐59歳で購入額が大幅に増加している、
- 売却額には、特段の変化は出ていない
の3点です。
2024年1月は有価証券購入意欲が高まった状態が続き、新NISAの効用が強くでていることが窺えます。なかでも35‐39歳の層は、大きく反応しています。もともと年代的にも資産形成に関心が高くなる世代であるうえに、2017年以降、iDeCoの拡充、老後2000万円問題、新NISA導入の議論など、その関心を一層高める話題が続いてきたことから、過去5年ほど最も大きな変化を見せています。
一方、60代以上の層に限ってみると、新NISA導入の影響はあまり出ているようには思えません。
今後は50代後半の動向にも注目
月次の統計を見ているなかで気になっているのが、55‐59歳の動向です。2015年以降のデータでそれほど急増することのなかったこの年代が、2024年1月には購入額が11,595円、前年比6倍、前月比1.76倍と大きく伸びました。月次統計ですから、そのブレの大きさは慎重にみなければなりませんが、今後の数値を見ることで、退職を間近に感じるこの世代が、NISAの拡充をどう捉えているのかを窺うことができるかもしれません。
売却額の減少にこそ効用があるのかも
長期のトレンドを図表3と図表4でみると、2つの特徴がわかります。
- 平均値の長期トレンドでは、2017年くらいから購入額が徐々に増加し、2021年半ばからその増加が顕著となっている、
- その増加のけん引役になっているのが35‐39歳の層である、
- 2022年をピークにした35‐39歳の大幅な「売却額」は、その後、減少を続けている、
新NISAの制度上の最大の特徴は、制度の恒久化と非課税期間の無期限化だと思います。その変化は、売却額の減少に表れているように思います。5年の非課税期間があった従来のNISAでは、5年以内に売却することが前提で投資されていたようで、20年のつみたてNISAでさえ短期的な売買がなされていました。そのため、10年間で累計20兆円を超える購入額があっても、残高は10兆円を超える程度にとどまっていたのが従来のNISA制度でした。
これが無期限化されたことで、株価の急騰局面が続いていても途中で売却することを抑えているのではないかと思われます。今後の売却の動向にも注目したいと思います。