私の心情(205)―お金との向き合い方66-資産形成・資産活用で「あったらいいね」100選
とかくお金との向き合い方といえば資産運用、資産形成と思われがちですが、一生涯を考えると、資産形成だけではなく資産活用も重要なはずです。それを登山に例えて、山を登る「資産形成」と山を下る「資産活用」と説明するようにしていますが、なかなか下山までは考えが至らないように思います。そこで、フィンウェル研究所では、一生涯お金と向き合うためにもこれまであまり注目されてこなかった資産活用の側に注力して情報発信を続けています。
レベル感バラバラの寄せ集めですが・・・
今回は、一生涯のお金との向き合い方を考えながら、これまでバラバラに指摘してきた資産形成から資産活用までの「あったらいいね」を、改めて集めてみました。
1-2行ごとのコメントですので、詳細は別に議論する必要があると思いますし、具体策のないものも多くあります。さらにこれまで言及したなかで「暴論ですね」と批判されたものもあります。とはいえ、できないとあきらめていたNISAの恒久化でさえあっさりと達成できました。まずは「あったらいい」と思えるものを拾い上げてみることが重要ではないかと思います。
ここでは100選としてひねり出したこともあり、項目ごとのレベル感のズレ、私の誤解、細かすぎるアイデア、簡単には行きそうにないもの、など“ごった煮”になっています。皆さんのご意見(可否、追加、もうあるよ!など)をうかがいながら、今後練り直していこうと思います。是非、皆さまのご意見をお寄せください。よろしくお願いいたします。
資産運用全般
- 確定申告がもっと一般的になり、所得・資産運用・税金などの意識を高める。例えば、ふるさと納税やiDeCoの還付金申請など確定申告を必要とするアイデアをほかにも広げる
- すべての資産運用口座の開設・管理にマイナンバーを使って(書類や印鑑が不要で)本人確認ができる
- 有価証券投資が生活のなかでもっと普通になる。例えば、有価証券口座を給与払い込み口座にして、クレジットカードが発行できれば生活費口座にできる(MRFでは公共料金やカードの支払いも可能だがシステム開発が難しいらしい)
- 複数名義口座を可能にする。共働き世帯の生活費口座のような仕組み(金額に上限をつけることで相続税に影響を与えないようにする)
- マスコミなどこれまで有価証券投資にあまり積極的になっていなかった業界の従業員がもっと有価証券投資に対して積極的になる(インサイダー取引や相場操縦などのリスクを回避する条件を前提に)
- 政府主導または業界主導で金融アドバイスの一歩手前の、金融ガイダンス(金融商品の推奨を行わない)の担い手を拡大する
- そのうえで、具体的な金融商品を提案できる独立系(手数料バイアスのかからない形態のことを言います)の金融アドバイザーを立ち上げる
- 金融相談、投資相談に係るアドバイス料を支払う風潮が一般に定着する
- 金融アドバイザーを各地域で活躍できるようにして、全国のコンビニ並みに増やす
- そのために投資商品別の手数料・フィーではなく、総残高に対するサービス・フィー体系の金融サービスが登場する
- 新NISAでは成長投資枠でもつみたて投資枠と同様に販売手数料をゼロにする
- 商品ごとに異なる投資信託の代行報酬が一律に設定されて、手数料の高いものを販売するいわゆる手数料バイアスが無いサービス環境を整える
- 手数料バイアスのない金融アドバイスがビジネスとして成り立つようにする
- 投資助言業のすそ野を拡大させ、伝統的な金融商品(上場株式、投資信託など)だけに限定した投資アドバイザーを創設し、育成する
- 金融サービス仲介業を育成する
- 良い金融アドバイザーを見分けるルールを作成する
- 良い金融アドバイザーが見つかるプラットフォームを作る
- 英国にある金融商品のプラットフォーム・ビジネスを日本でも広げる
- 信託銀行にDCの運管ビジネスのシステム、ノウハウを使ってプラットフォーム・ビジネスを展開させる
- 日銀保有ETFを資産形成・資産活用のために個人へ時価を下回る価格で売却する
- 日銀ETFを購入した投資家が退職まで保有しなければならない仕組み(市場放出時期を分散させるため)として、企業型DC・iDeCoを活用する(同様な仕組みを作って別枠にしても可)
- 日銀ETFを個人に売却する際の投資家のすそ野を広げるために、ETFを銀行でも購入できるようにする
- 生活者にとってのETF活用アイデアをもっと豊富にする(例えば高配当株投資の代替案など)
- 口座アグリゲーション・アプリから有価証券の注文ができるようにする
- 資産運用のコストを明確化するために、金融事業者はサービスごとにその対価としての手数料を紐づけ、公開する(サービスの定義は業界で共通に)
- ファンドラップ口座のコストが、サービスごとに紐づけられ、比較検討ができるようにする
- 投資信託の選定に際して、コスト(特に信託報酬)への意識が強くなっているが、運用哲学に対する目線も高まるようにする
- 投資信託の定性評価も含めた分析を専門に行うファンドアナリストが増加して、中立的な分析とその公表を行うようにする
- 投資信託で運用残高の増加に伴って運用報酬を引き下げる慣習が定着する
- 資産運用会社のコストを低減させる施策(バックオフィス業務のアウトソース化・標準化、コンプライアンス業務の外注化、基準価格の一者計算等)を進める
- 独立系の運用会社を増やして、独自色の強い投資信託を登場させる
- 投資信託に関連するシステムベンダーの競争が進むことで運用コストの低下がもたらされるようにする
- 資産運用に特化したビジネスが可能になるよう投資信託組成ビジネスを分離化、アウトソース化する
- 金融商品に関する必要書面がわかりやすく簡素になってオンラインで提供され、分析や比較がやりやすくなる(HTML化なども重要)ようにする
- 資産運用会社(投資信託)の商品組成に外部の知見を入れる
- 資産運用会社(投資信託)と販売金融機関との間の顧客情報の共有を進める
- 保険業界において、商品の手数料等の透明化、明確化を進める
- 金融サービス仲介業が、業種を問わず広がり、投資家の利便性を高める
- 金融商品仲介業者のコンプライアンス業務をアウトソース化し、標準化する
- 「金持ち優遇」批判の吟味を行い、「金持ちになること」を容認する社会にする
- 政府は個人金融資産の目標(例えば個人金融資産を20年で4000兆円に)を設定して、それを資産所得倍増プランのKPIにする
- 金融教育現場で教える側(教師や学校)の負担を軽減させるために、使う教材の定型化を図る
- 教材の認証を金融教育推進機構(仮)が担うようにする
- 夏休みの自由研究など課外活動での金融教育をより重視する
- 大学の授業の中にパーソナル・ファイナンスの講義を常設・義務化する
- 中小企業の従業員向け金融経済教育を制度化する
- 特に退職前の時期に、退職後のお金との向き合い方を伝える教育を重点的に行う
- ファイナンシャル・プランナーの活動範囲を広げ、資格ではなく職業として定着させる
資産形成―NISA、企業型DC、iDeCo
- マイナンバーを使ってNISA口座の管理ができるようにする
- マイナンバーを使って非課税口座の開設・管理を、金融機関ではなく、個人が担えるようにする
- NISAの複数口座保有を可能にする(年間の拠出上限額は個人が自身で管理する)
- 新NISAの生涯上限枠を撤廃する(年間拠出上限は維持する)
- 新NISAでスイッチングができるようにする
- スイッチングが可能になった段階で、新NISAの対象に預金・債券を入れる(金利が正常化すれば資産形成の対象になる)
- 一般NISAから新NISAへの資金移管に際して、年末の最終日に売却して新年の最初に同じ銘柄を買い戻すサービス(これによって行動バイアスによる買い戻しの遅れを回避する)を提供する
- 企業型DC・iDeCoの口座開設・管理をすべてオンラインでできるようにする
- 企業型DC、iDeCoの制度内容や取り扱い金融商品そのものの説明を運営管理機関以外のアドバイザーでも行えるようにする
- デューディリジェンスの外部機関を設立して、企業型DCにおけるより商品採用の透明性を高める
- 企業型DCの採用商品を外部からでもわかるように公表する(企業間の競争ができるようになる)
- DCに拠出した際の所得税還付先を銀行口座だけでなく、DC口座でも可能にする(政府拠出的なアイデア)
- DC資産を退職時に引き出す際、有価証券のまま課税口座・非課税口座にロールオーバーできるようにする
- DCの採用本数上限35本を撤廃する
- DCの商品採用枠に資産の取り崩しに使いやすい投信を採用する
- 退職後に年金受取とした場合、DCの口座管理料、引き出し手数料を企業負担とする
- DCをマイナンバーに紐づけ、転職時にDC口座移換の手続きをしなくて済むように複数口座の保有を認める
- をマイナンバーに紐つけることで、企業型DCからの自動移換者への連絡を取りやすくし、自動移換そのものを減少させる
- 企業型DCを(運営管理機関が保有するのではなく)個人口座として有価証券を保有できるようにすることで転職時にも現金化しないで有価証券を保有できるようにする
- 拠出上限額を引き上げる
- DC用のデフォルト商品から元本確保型を除く
- iDeCo+を普及させるために、企業がiDeCo+を導入する際の支援を官民共同で行う
- 中小企業の従業員に向けたiDeCo+の普及教育を行う
- iDeCo+の採用が福利厚生の一環として評価され、社員採用時の情報開示の必須項目にする
- DC専用ファンドを廃止する(一般口座にロールオーバーするときに専用ファンドなのでできないという事態を避けるため)
- 企業の従業員として提供されている他の資産形成手段、例えば持株会、財形年金、社内預金制度などを総合的に資産管理できるような仕組みを作る
資産活用
- 資産活用・デキュムレーション・資産の取り崩しという概念、方法、アイデアを普及させる
- 資産の取り崩し方法次第で資産の持続力に大きく違いが出ることを周知させる
- 金融機関の投信引き出しシステムの高度化を図り、自動的な「率」による引き出しを可能にする
- 退職後の使いながら運用する状況を想定し、必要資産額を推計するアプリ、システムを開発する
- 資産の引き出しの最適化を図れるシステムを開発する
- 人生のどこかの段階で資産運用をあきらめなければならないような仕組みを撤廃して、生涯にわたって資産運用を継続できるようなスキーム(世代を超えて管理できる仕組みなど)の創設
- 上記アイデアを対象にしたアドバイザー・アプリ、ロボット・アドバイザーを開発する
- 退職所得を作り出すことを念頭においた国債(例えば10年据え置き、その後毎年一定額を償還するような形式)を発行する
- トンチン年金のような生涯所得を確保できる仕組みを広げる
- 手数料を下げ、顧客本位の仕組みにすることで、運用ができスイッチングも可能な金融商品として変額年金、ラップ口座などを復活させる
- 認知症診断薬と治療薬が手軽に使えるようになることで認知・判断能力の低下前に資産活用の対応を可能にする
- 亡くなった配偶者のNISA口座の残高相当額を翌年の拠出上限額に一時的に上乗せする相続NISAの制度(英国の相続ISA制度)を導入する
- 新NISAの成長投資枠で毎月分配型投資信託を認める(取り崩しのアイデアのひとつ)
- 資産相続を手軽に行える低コストの信託サービスを普及させる
- 資産活用に特化した金融教育(退職直前のお金との向き合い方教室)を普及させる
- 退職直前の金融教育に政府が積極的に関与する制度(英国のPension Wiseの日本版)を創設する
- 分配型投資信託に対する誤解をなくす(タコ足だからNGは資産形成のときだけ)
- 在職老齢年金制度(年金受給額と総報酬月額の合計が一定額を超えると年金の一部が支給停止になる)を撤廃・改正して、高齢者ができるだけ高い報酬で働ける環境にする
- スマホで処理するシステムでも、高齢者が対応できるようにPC・タブレットなど多様なアプローチを提供する(資産形成層にはスマホ・デフォルトでOK)
- 相続税制上の有価証券の評価を他資産の評価と平仄を合わせる(相続で有価証券よりも預金、保険、不動産などにシフトすることを避ける)
- 成年後見制度の有効活用と資産を現金化する慣行をなくす(米国のプルーデント・インベスター・ルールのような考え方の導入)
- 住宅・不動産のセカンダリー市場を充実させる
- 住宅を担保にしたリバースモーゲージなどの市場の拡大・健全化を進め、住宅をリタイアメント・インカムの一角に高める
- 退職後に地方都市へ移住しやすくするために、地方自治体の退職世代の受け入れ体制を整備する
- 定年制を無くすことで、退職年齢を自由に選択できるようにし、資産の取り崩しに関する多様なアイデアを実現しやすくする
- 年金の繰り下げ受給のメリットを訴求して、一般的になるようにする