私の心情(121)―地方都市移住36-地方都市での生活の満足度はよりパーソナルなもの

生活全般の満足度は、都市の推奨度とは違う

「私の心情(120)」では、移住してみたい都市と実際に住んでいる人が推奨する都市にかなりギャップがあることがわかりました。しかも、推奨するからと言って、そこに住んでいる人の生活全般の満足度が高いというわけでもありませんでした。

そこで、今度は住んでいる人の「生活全般の満足度」ランキングを発表します!

第3位は和歌山、第2位は宇都宮、そして栄えある第1位は高知です。

生活全般の満足度の他に、健康状態、仕事・やりがい、人間関係、資産水準のそれぞれの満足度も並べてみると、上位に来る都市の生活者では全般的にこの4つの満足度が高めであることがわかります。どれか突出して満足が高いというわけでなく、全般的な満足度の高さが求められるということでしょうか。なかでも資産水準は、上位に来る都市の居住者においては、すべて平均以上の満足度となっています。生活全般の満足度に最も影響を与えていたのが資産水準の満足度であったことを考えると、納得できることかもしれません。

ところでこの表の右側に推奨度も示していますが、満足度の高い都市でも推奨度は高くないということがわかります。ちなみに、満足度トップの高知は推奨度では第21位、満足度第2位の宇都宮、第3位の和歌山に至っては推奨度はそれぞれ平均以下の第30位と第32位でした。

ちなみに、「私の心情(120)」に示した生活全般の満足と移住を勧める推奨度の関係図に都市名を入れてみました(データ集には全部の都市名が入っています)。改めて都市の推奨度が高い、福岡、鹿児島、金沢が満足度では低く、逆に満足度で高かった高知、宇都宮、和歌山が推奨度では低いことがわかります。

まずは生活費の削減ができるかどうかがカギ

改めて考えれば、満足度はよりパーソナルなものです。生活全般の満足度には、資産水準に対する満足度が大きく影響していますが、都市の推奨度にはそうした個人の保有する資産水準はあまり影響しません。その結果、「満足度」と「推奨度」に違いが出てくるのでしょう。

では何をもとに移住先、または都市を選べばいいのでしょうか。すべてを網羅することはできませんが、今回のアンケート結果を分析するなかで感じたことは、少なくとも退職後の移住を考えるのであれば「生活費が下げられる」という点を重視すべきだということです。その結果、どの都市に移住をするとしても、他者の推奨よりも自身の生活全般の満足度が高まるような対応ができるはずです。またそのための準備(=資産形成)もしていくことができるはずです。

移住に関するアンケート調査を2019年、2021年、2022年と3回行ってきましたが、移住した方の4分の3が「良かった」と評価されています。そして、その評価の柱は「生活費の削減」でした。「良かった」と評価した人の42.8%が理由として「生活費が削減できた」ことを選び、「思ったほど良くなかった」と回答した人の42.5%が「思ったほど生活コストが下がらなかった」ことを理由に挙げています。移住の評価の良し悪しともにその評価軸は「生活費削減」にあるのです。

そのうえで、移住先で医療体制、市役所などの公的サービス、交通の便といった「都市の機能」を重視するのであれば、人口100万人以上の都市の方が候補が多いでしょうし、食べ物や気候、環境など「生活の楽しさ」を重視するのであれば30‐100万人規模の都市が候補として挙がってくるのではないでしょうか。