私の心情(119)―資産活用アドバイス48-60代6000人、退職・移住・世帯構成の満足度

退職してこそ満足度が高まる

図表1は年齢と5つの満足度の関係をグラフにしたものですが、年齢が上がるほど5つとも総じて満足度が高まっているように窺えます。

しかし、回帰分析を行うと、年齢のファクターはほとんど満足度に影響していないことがわかりました(P値は0.6と非常に高く、係数は0.0023とほとんど0に近い)。それよりも仕事をしているかどうかの要素が満足度に与える影響の方が強いようです。仕事をしているかどうかを「就労=1」、「退職=0」として重回帰分析を行うと、係数は-0.1155と符合がマイナスになっていることが特徴です。すなわち60代では仕事をしていない方が満足度が高くなるということです。そのため、総じて年齢が高い人ほど退職していることから満足度が高くなるように映っているのでしょう。

満足度の面で移住のハードルは高くない

仮説では移住によって満足度が上がるのではないかとみていました。言い換えると、東京、大阪、名古屋といった大都市より、人口の少ない都市の方が満足度は高いだろうとみていたわけです。しかし、図表2でみる通り、3大都市、100万人以上都市、30万人以上都市(いずれも県庁所在都市)で、それほど差異がありませんでした。強いて挙げれば仕事・やりがいと人間関係の満足度は都市の規模が小さいほど高めに出ていますが、それほど大きな差とも言えません。また、居住している都市を他人に推奨するかどうかを聞いた推奨度との回帰分析を行ってみましたが、この係数は小さく、影響度がほとんどないこともわかりました。

ただ、これは見方を変えると、3大都市に居住することの満足度と変わらない満足度を、地方都市でも得られるといことでもあります。その意味では、満足度を客観的にみれば、移住のハードルは本来高くはないといえるはずです。

ひとりの世帯は満足度が低くなる

家族構成も満足には影響がありそうです。満足度の他に、勤労状況、生活費水準、資産運用状況、都市の推奨度と合わせて家族構成も入れて重回帰分析を行った結果(単身=1、夫婦=2として分析)、係数は0.081と比較的高めでした。よりわかりやすく集計してみたのが図表3です。単身のみ、夫婦のみの他にそれぞれに子どもがいる、親がいると分けてみましたが、単身グループは健康状態、仕事・やりがい、人間関係、資産水準のすべての満足度で、夫婦グループの満足度よりも低く、結果として生活全般の満足度が単身グループで3を下回る水準にとどまっています。

また単身グループのなかでも単身のみ世帯よりも子どもや親が同居している方が満足度が高くなっている点をみると、退職後の家族構成は想像以上に重要といえるかもしれません。