私の心情(85)―お金との向き合い方27-仕事の量と質の変化
長く働くということ
定年に近づくにつれて長く働くためには何が必要かをよく考えるようになりました。定年後の仕事ではスキルと楽しさが大切ですが、その前提として体と心の健康も重要です。特にコロナ禍で未曽有の健康リスクが高まったことで体の健康の大切さはより実感していますが、楽しさに通ずる心の健康も不可欠です。適度の緊張感、社会へのかかわりという意識、そして知識欲や思考力などなど、挙げればきりがないのですが、フィンウェル研究所の仕事はこうしたことを満たしてくれるという点では良いものだと思っています。
現役のうちに「いつ退職するか」、「退職後は全く働かいないのか」、「もし働くなら何をするのか」を考えることは大切だと思います。「できるだけ早く退職するために、資産形成を加速させる」というFIRE(Financial Independence, Retire Early)の考え方が最近はやりのようです。“Financial Independenceが達成できれば働かない”と考えるか、“Financial Independenceが達成できたから、余裕をもって働く”と考えるか。私だったら、後者ですね。もちろん“Financial Independenceなんてまだまだ”という人も多いので、まあ普通はできるだけ長く働きたいと考えるものだと思いますが。
私のサンプルをご紹介します
FIREは脇に置いといて、長く働くためにどうすればいいのかについて、私の事例を紹介します。誰でも同じことをすべきというつもりは全くありません。単なる参考ですから、そのなかから、何か自分に使えるちょっとしたポイントが見つかれば、それで十分です。「これは上手くいかないかも!?」っていう気付きでも意味はあるはずです。
長く働くための準備期間は大切だと思います。そのため、退職後の生活に入るプロセスも考えておくべきでしょう。60歳になってからそれを考えても、なかなかうまくはいかないかもしれません。だからこそ、早い段階から定年後も働くことを可能にするための準備を進めるべきだと思います。マネジメントスキルよりも専門性を重視する姿勢を持ち続けたり、移行期間として2年間の継続雇用を利用したりしました。
60歳定年後の継続雇用契約中は、週3日会社員として通常勤務を行い、残りはフィンウェル研究所の仕事をするパターンになりました。さらにそれから1年もしないうちに新型コロナウイルス蔓延の影響で、自宅勤務に変わりましたから、3日の会社員としての活動と、自分の会社であるフィンウェル研究所の活動を、意識して峻別する必要がありました。
大きく変わった朝の2時間
この2年間の継続雇用中は、それまでよりも仕事の量は減り、仕事の質も変わりました。大きな変化は、これまでしたいと思いながらもなかなかできなかった朝のウォーキングを1-2時間かけてできるようになったことでしょう。もちろんコロナ禍で自宅での勤務が推奨されたことも大きかったですが。その詳細は私のFacebookによく紹介しています。
朝早くオフィスに入るのが、会社員生活で長く続けてきたライフスタイルでした。大手町・日本橋に勤務のころは朝6時30分にはオフィスに入っていましたから、当時自宅のあった稲城市は5時前に出ていました。神谷町・六本木でも7時にはオフィスにいました。今でも朝起きるのは変わっておらず6時前ですが、朝食後に1-2時間のウォーキングをしても、9時には自宅で仕事を始められます。コロナ禍での自宅勤務があったからこそ、この形態への移行がスムーズだったのかもしれません。
経理業務と営業活動
仕事の質も変わりました。会社員時代のいわゆる「会社内の会議」は全くなくなり、代わりに経理処理や事務処理に時間を割くことが多くなりました。自分一人で会社を切り盛りするのですから、こうした業務が増えるのは避けられません。また、営業活動も増えました。会社員生活ですと、私のような非営業部門が外部の方とMeetingをする場合には、営業部門がそれを収益に結び付けます。そのため、1つのMeetingがいくらの収益を会社にもたらすか、私の給与にどれだけの影響を及ぼすかは、ほとんど関知しないで済みました。
しかし、今は情報提供しながら、「このMeetingはフィンウェル研究所にいくらの報酬をもたらすか」を常に気にかけています。それどころか、Meeting1回でいくらの報酬になるのかをMeetingのなかで先方に聞くことも多々あります。その意味では、これまで以上に自分の提供する情報の価値を自分で認識することになります。情報提供しながら、その対価を聞くという直接的なフィードバックを求めることになり、かなり恥ずかしさを感じる交渉もしています。
報酬を払ってアンケート調査も持続できるか
今年5月からフィンウェル研究所は、私に役員報酬を出すことにしたことは大きな変化です。フィンウェル研究所は2019年5月に設立しましたが、それ以来2年間は給与を支払えるほど収入がありませんでした。収入の大半をアンケート調査費用につぎ込んでいましたし、そのアンケート調査結果は公表していましたので、ある意味で業務が公共的な色合いを持っていました。収入からアンケート調査費用を捻出するか、給与を捻出するかといえば、前者を選んでいたわけです。その2年間は、まだ会社員として継続雇用中の給与が出ていましたので、それも何とか可能でした。
しかし、完全独立するとそうはいきませんから、役員報酬を支払うことにしました。さてそれでアンケート調査費用もカバーしながら、会社としては黒字を維持できるかという分岐点に立ったわけです。フィンウェル研究所の代表社員として人件費を負担する立場と、報酬を受け取る側としての立場の2つを同時に感じるわけで、これまでなかった感覚です。報酬を1年間支払い続けられるかという責任感と、フィンウェル研究所としての中核業務であるアンケート調査の実施を両立させるだけの収入を得られえるかというのが、当面の大きな課題となったわけです。