私の心情(72)―地方都市移住22-人口50万人都市以外でも移住先はあるのかも?!
自分の住んでいる都市を人に勧める人は少ないのか?
地方都市移住のアンケート調査では、現在3大都市以外に居住している2104人に自身が住んでいる都市の評価を聞いています。なかでも今回は「あなたは今住んでいる都市を退職後の生活先として他の人にも勧めますか」といった設問を用意して、0(やめた方がよい)から10(ぜひ住むべきだ)までの11段階で評価するようお願いしました。いわゆるNPS®(ネット・プロモーション・スコア)に近い設問ですが、その平均値は6.04、NPSスコア(評点10と9のスコアの比率から、6以下のスコアの比率を引いた数値)は-46.7でした。日本人は総じて低めに出るといわれますが、それでもかなり低い数値といっていいでしょう。そのため、ここではこれをそのまま見るよりも相対的な比較でみるようにします。
移住先候補として都市の規模はあまり関係ないのかも
地方都市の規模別に3分類し、それぞれで移住してきた人と長く住んでいる人に分けて、スコアを集計してみると、下の表のとおりになります。ほぼスコアは都市の規模や移住してきたかどうかに関係なく、‐50程度で違いがありません。低い水準といい、差異がないことといい、あまり特徴のない結果となりました。
ただ、コラム「私の心情」67で書いた通り、移住した269人のうち196人、72.9%が「移住して良かった」と評価していますから、「‐50が低い水準」という分析よりは、「都市の規模でそれほど大きな差異がない」ことがこの設問からの結論でしょう。これまで「退職後の生活は人口50万人程度の都市が条件としては良い」とみていましたが、実際に移住した人に聞いてみると、100万人以上の都市でも30万人未満の都市でも、その良さに関しては違いがないのかもしれません。“住めば都”なのです。
年収や資産規模が都市の評価に影響している
とはいえ、例えば資産規模や年収で見ると、差異がでていて、住んでいる都市への評価が変わっています。3大都市の居住者も含めた4140人を世帯年収と保有資産でグループ化して、そのスコアを算出してみると、世帯年収が高い人ほど、また保有資産が多い人ほど自分の住んでいる都市を評価する比率が高くなっていることがわかりました。移住先の候補としてどの都市が良いかを選ぶ際には、都市の規模といった客観的な評価基準だけではなく、自分の年収や資産規模といった主観的な評価基準との適合具合が大切になりそうです。次回のコラムで、その点をさらに深掘りしてみます。