私の心情(48)―資産活用アドバイス18-「IFAとは何者か」出版記念セミナーでのQ&A-その1
2020年12月1日に、金融財政事情研究会から「IFAとは何者か アドバイザーとプラットフォーマーのすべて」を上梓し、その出版記念セミナーで参加者から興味深いご質問をたくさんいただきました。今回から3回に分けて、その質問に関する私の回答を紹介いたします。第1回と第2回は手数料に関する質問、第3回はIFAビジネスに関する質問にまとめています。
なお、このQ&Aだけでは一部分しか議論していませんので、誤解を招く可能性があります。「IFAとは何者か」の本と合わせてお読みいただけますようお願いします。
Q:英国RDRのような規制が日本でも導入されるのか?その場合の影響は?
A: 手数料制の撤廃では2つの視点で考えることが必要だと思っています。販売手数料と代行報酬です。販売手数料は制度の導入とは別にすでに引き下げ競争が始まり0%へ向かう流れに入ったのではないでしょうか。同様に、保険商品の手数料に関しても「高いのではないか」という指摘が多くなっており、早晩こうした流れは押し寄せることになると思います。特に重要情報シートの導入はきっかけになるのではないかと思います。もうひとつは投資信託の代行報酬です。こちらは英国のRDRで禁止されたキックバック的な手数料に近いものといえるかもしれません。金融審議会市場ワーキング・グループの委員の中でもそうした指摘が出ていますので、こちらも議論のテーブルに乗る可能性があると思います。個人的には、顧客本位の業務運営を志向するには、手数料バイアスをなくすことが最も大きな一歩になると思っていますので、こうした「手数料の高いものを提供するという流れを止める動き」が顧客本位に向けて出てくるのではないでしょうか。それはアドバイスに対する正当な評価を促す力になるとも思っています。
Q: 英国で顧客が負担する費用はどの程度か?
A: 英国では、大雑把に言えば、投資信託の場合で、運用フィーで70bp前後、プラットフォームフィーで20-25bp、継続アドバイザー・フィーで50-100bpということですから、合計で150-200bpといったところです。決して安いというわけではありません。
Q: 残高連動型のフィーについて、アドバイスの質が変わらないとすると、逆にその残高によっては不公平が生じないだろうか?
A: アドバイスの質を落とすことはできませんので、やはり最低限のフィーは必要になります。そのため、英国ではアドバイス・ギャップといわれた課題が持ち上がっています。資産が少ないと最低限のアドバイス・フィーが高額になるため、アドバイスそのものを受けないといった事態が生じていることです。その解消のために、アドバイザーの業務を効率化してフィーを引き下げられるように、AIやシステムの高度化を進める金融当局主導のプロジェクトが動いていますし、その隙間を埋めるロボアドバイザーが登場するなどの、いろいろな対策、対応が動き始めています。それでも簡単には埋まりきらないと思います。