私の心情(3)ー円グラフを使って「貯蓄から投資へ」を説明するのはやめよう

「貯蓄から投資へ」という言葉は何度も繰り返されてきましたが、20年前から個人金融資産に占める現金・預金の比率は50%を超えたままで変わっていません。まったく「貯蓄から投資へ」が進まなかったわけですから、この施策は失敗だっといっていいでしょう。

なぜうまくいかなかったのでしょうか。私は、目的と手段を取り違えたままこの呪文を唱えてきたからではないかと思っています。”個人金融資産を円グラフで表して、日米の比較をしながら日本の現金・預金の比率の高さを嘆く”、これがこれまでの「貯蓄から投資へ」の進めるためのアプローチでした。しかし、個人金融資産の6割を高齢者が保有している中で、この嘆きは「高齢者に預金をして株や投信を買え」といっているようなものです。理論的に考えてもリスクを取りにくくなる高齢者に、あえて資産をリスク性の高いものに移せと言っているようものです。これでは成功するわけはありません。

本来は個人資産の構成を変えることが目的ではなかったはずです。高齢社会が来るから早めに個人金融資産を増やしておくことが目的だったはずです。そしてその手段として、より成長が見込める資産=リスク性資産の比率を高めるというのが、「貯蓄から投資へ」だっとように思います。目的と手段をごっちゃにしてしまったことが、失敗の原因いだったと思います。

やっと最近は「貯蓄から資産形成へ」とスローガンが変わってきました。これは個人金融資産を増やす努力として、毎月の給料から資産を作り出す流れの行き先を「預金から有価証券へと変える」というメッセージです。収入から預貯金に資金が流れる動きを「貯蓄」と呼ぶなら、収入から有価証券に資金が流れる動きを「資産形成」と呼ぶ。それが「貯蓄から資産形成へ」ということになります。これは、メッセージが高齢者に向けたものから、現役世代に向けたものに変わっていることも示しています。

これからは円グラフを使って「貯蓄から投資へ」を説明するのをやめることにしたいものです。