私の心情(98)―お金との向き合い方33-子どもにお金の話をしよう

2022年度から高校の家庭科で金融教育が行われることになりました。画期的なことだと思いますが、一方で、“遅まきながら”という感じもしますね。

学校で金融教育を受けた人は米国の3分の1

学校で金融教育を受けた人はどれくらいいるのでしょうか。金融広報中央委員会が2019年に行った「金融リテラシー調査」(対象25,000人)では、金融教育に関する設問も含まれています。その結果によると、「金融教育を行うべきだ」と回答した人は67.2%と高く、金融教育が求められていることがわかります。ただ実際には「受ける機会があって、それを受けた」と回答した人は7.2%にとどまっています。米国での同じ趣旨の設問では21.0%が受けたと回答していて、総体として日本の金融教育受講者は米国の3分の1にとどまっていることがわかります。なお、18‐24歳、すなわち大学または大学院に在籍中の人で金融教育を受けた人の比率は17.0%と高いのですが、それでも米国全体の数値よりも低いというのが実態です。

先生で金融教育を受けたのは10人に1人

ところで、高校で金融教育を進めるにあたって、高校の先生向けに資産形成の研修の講師を頼まれることもあります。先生自身がそれまで資産形成してこなかったということもあって、腹落ちするまでに時間がかかるとよく指摘されます。確かに、先の金融リテラシー調査でも、「教員」で金融教育を受けた人はわずか9.7%でした。先生自身の金融リテラシーの向上も急がれるところです。

家庭でお金の話をするチャンス!

さらに金融教育を行うときに、「お金の話は人前でするものではない」といった考え方も残っていますね。これも、もう一つ、金融教育が進まない理由かもしれません。であれば代わりに家庭でお金の話をすることが求められるはずですよね。

金融リテラシー調査では、家庭で金融について「教わる機会があったか」どうかも聞いていますが、「あった」と回答しているのがなんと20.3%にも達しています。これは思った以上に高い水準ですが、ただどんな話をしたのかが気になるところです。

給与明細を説明してはどうでしょう?

そこでちょっと考えたのですが、親が子どもに自分の給与明細を見せて説明するというのはどうでしょう。10年以上前になりますが、いくつかの私立大学で講義をさせていただいた折に、学生の皆さんに授業料と親の年収を知っているかどうかを挙手で聞いてみたことがあります。自分の学費が親の年収の何割くらいかを知ってもらうつもりだったのですが、授業料を知っている学生は5割程度、親の年収を知っている学生は2割程度でした。積極的に参加してくれなかった学生もいるでしょうが、それにして低いなと思ったことを覚えています。

資産形成は自身の年収との関係で考えるべきだと思っています。具体的には、資産形成額=年収×資産形成比率という掛け算で考えることが大切だと思っているのですが、だからこそ年収、特に親の年収を知ることは将来の自身のお金との向き合い方に大きな影響があると思うのです。

下に示した金融リテラシークイズの設問は、給与明細の見方を答えるものです。OECDがPISAプログラムの一環として、2012年に行った12歳向けのクイズの1つです。われわれにとっては、簡単な内容ですが、実際の給与明細書を使って子どもに教えることができれば、家庭での金融教育の第一歩になるのではないかと思います。そのためには親も税金や社会保険料、所得控除といったことを調べることにもなりますし。