私の心情(97)―お金との向き合い方32-加速する若年層の投資とその売却

6月に「私の心情80」で言及した通り、総務省「家計調査」のデータでみると、有価証券の購入、売却、純購入にここ2‐3年大きな変化があります。前回のコラムでは今年4月までのデータを紹介していますが、今回のコラムでは7月までのデータをUpdateしてみました。5‐7月も一段とその傾向が加速しています。

20年ぶりの高水準の有価証券購入額

家計調査の有価証券購入額の全世代の平均値ですが、月々の変動が大きいために12か月の移動平均でグラフ化しています。2016年、17年あたりからじりじりと購入額が上昇に転じ、特に新型コロナが蔓延し始めた2020年3月あたりからは20年ぶりに月額購入額の12か月平均値が2000円を超えてきました。そして、2021年7月を起点にした過去12か月の移動平均は3000円台となっています。

若年層が投資の表舞台に登場

このデータから34歳以下だけ抽出すると(家計調査の区分変更のため34歳以下は2015年以降のみ)と、2018年以降に若年層が大きく有価証券購入を進めているのがわかります。それまでは、34歳以下の金額が全世代平均の金額を下回るトレンドでしたが、2018年以降は全世代のトレンドと同じ水準になっています。これは34歳以下の若年層が有価証券投資の重要なセグメントになってきたことを示しています。

若年層の売却増が顕著

ただ、34歳以下の売却額も急増していることが気になります。特に2020年の夏あたりから若年層の売却増加が顕著になっています。購入額の増加と合わせて考えると、利益確定の売りになっているように思われますが、全世代平均では売却額が購入額の増加ほど進んでいませんので、「利益確定」は若年層の特徴といえるかもしれません。

ところで購入額の増加が2018年あたりから始まっていることを考えると、つみたてNISAの好影響があったと考えられます。しかし、それに合わせて売却も進んでいるとしたら、残念な部分もあるといわざるを得ません。もちろん純購入額は増加していますから、プラス・マイナス両面をみればプラスの方が大きいと思いますが、マイナス面、すなわち売却の増加をいかに抑制するかという点も重要になります。

毎年の「枠」を意識させる有期限の非課税投資

つみたてNISAでは、毎年の「枠」を意識させがちであることを6月のコラムでも指摘しました。例えば、2019年につみたてNISAで投資して利益が出た場合、「非課税ならまずは利益確定しておこう。また来年新しく非課税投資をすればいいから」といったマインドセットに陥っていないだろうか。特に非課税期間があるということは、過剰に「2019年枠」、「2020年枠」を意識させます。このマインドセットを変えられるのは非課税期間の恒久化しかないように思います。投資した年の「枠」を考えなくてよくなれば、短期売買は少なくなるように感じます。