私の心情(73)―地方都市移住23-移住先選定では「楽しさ」がカギ

都市の規模で移住先として考える評価基準が違う

前回紹介したように、自分の住んでいる都市の評価は、意外に都市の規模といった客観的な基準では差が見つかりませんでした。これまで50万人程度の地方都市が一番いいのではないかと考えていましたが、これは私の個人的な感覚なのかもしれません。

ただ、なぜその都市が良いのかをもう少し突き詰めてみると、100万人を超える地方都市と30‐100万人の地方都市では求める評価軸が違っていることも見えてきました。この基準の違いが移住先の都市を選ぶ際には重要になると考えます。

60代の4140人を対象に、現在住んでいる都市の良い点と課題を挙げてもらいました(複数回答可)。総じて多くの方が良い点をたくさん挙げていて、課題はそれほど挙げていませんから、前回のコラムに書いたようにNPS🄬スコアが低いからと言って住んでいる都市に対する絶対的な評価が低いことではないようです。

なお、良い点で挙げられた上位3つは①交通の便の良さ、②医療体制の充実、③大都市へのアクセス、課題の上位3つは①物価、②家賃・住居費、③交通の便でした。また、その他で挙げられていたのがよい点、課題の両方でトップだったのは災害・治安の状況だったのは気になるところです。

移住先の選定には「楽しさ」が重要

この良い点、課題はそれを挙げた人が多いということだけではあまり意味をなしません。それが都市の評価に結びついているかどうかが大切になります。それを知るために良い点、課題のそれぞれの項目ごとにNPSスコアを集計することで、どの項目を挙げた人たちが、自身が住んでいる都市を評価しているのか、評価していないのかを知ることができます。そのクロス分析の結果が次の2つの表です。

まず住んでいる都市の良い点ごとにNPS🄬スコアを分析すると、「食べ物がおいしいこと」と「趣味の集まりがある」の2点を挙げた人たちが、自身が住んでいる都市への評価を高くしていることがわかります。この2つを黄緑色でハイライトしています。逆に最もたくさんの人が挙げた「交通の便の良さ」は決してNPS🄬スコアの高さとはつながっていないようです。

一方、課題のなかでNPS🄬スコアの低さとつながっているのは「行政サービスの使いにくさ」と「退屈なところ」でした。良い点と課題を対比してみると、「食べ物」、「趣味」と「退屈」がカギになりますから、退職後の生活をする場所としての「楽しみ」の要素が大切であることに気づきます。

物価、食べ物なら30‐100万人規模の都市、行政サービス、楽しさなら100万人以上の都市

この視点から、もう一度、住んでいる都市の良い点を都市の規模別にクロス分析した結果を見てください。黄緑色でハイライトしたところは、全体よりも比率の高いところ、すなわち都市の規模の特徴が出ているところです。これを見ると100万人以上の都市と、100万人未満の都市で特徴がきれいに分かれていることがわかります。

100万人未満の都市では、物価、食べ物、住居費が評価ポイントです。一方で100万人以上の都市では、趣味、医療体制、交通の便、行政サービスといったところが特徴になっています。このなかで、先ほどのNPS🄬スコアから見た都市の評価につながりやすい項目としてみると、100万人未満の都市では「食べ物がおいしい」ところが大切で、100万人以上の都市では「趣味の集まりが多い」ことが評価のポイントとして重要といえます。