私の心情(57)―お金との向き合い方18-50代で住宅ローン

50代後半で転居

ご承知の通り、私は「退職後したら、地方都市に移住して今の生活水準を維持しながら生活コストを下げた生活を考えるべきだ」と伝えてきました。で、その都度、「野尻さんはどうするんですか?」と聞かれます。「なんだ、言うだけか!」といわれそうですが、今のところまだ具体的な計画が立っていないのが実際です。

ところで私は50代半ばにマンションを引っ越しました。東京都の郊外にあるマンションから都心のマンションへの引っ越しです。「地方都市移住を進めているのに、都心に引っ越すとは真逆」と指摘されそうですが、これも生活コストの引き下げを想定してのことです。マンションの大きさは家族5人用から夫婦2人用に半分になりました。(写真は住んでいるマンションとは関係ありません)

長く働くための対策

それに伴って、もろもろのコストが変わってきました。一番大きかったのは通勤時間(往復3時間ほど)の削減です。経費という点では、通勤費は会社負担ですから私の生活には影響はないわけですが、体力への影響は測りしれません。このまま続けていては、「長く働く」というもう一つの退職後の課題をこなせません。まずは自分の体力を温存・維持できるかが大切だと考えました。ちょうど、子どもたちも独立して生活できる年齢になっていましたので、タイミングとしてはよかったと思います。

生活費のダウンサイジング

その次に大きかったのは車の保有コスト削減です。それまで5人家族用にとワンボックスカーを所有していましたが、これを廃車にしたことで、税金を含めた維持費と駐車場代がかからなくなりました。これは金銭面では大きなメリットです。

さらに歩くことが増えた点もプラスです。最近は新型コロナウイルス蔓延の影響もありますが、新宿や渋谷への用事の折はほとんど歩くようになりました。運動不足解消のつもりなら片道1時間くらいのウォーキングは当たり前になっています。

もちろん郊外のマンションのローンは住んでいるうちにかなり返済してきましたから、売却額をうまく使って買い替えのマンションのローンの金額を最小限にすることのメリットも重要です。それによって現在の返済負担がかなり少なくなっていることも、生活費のダウンサイジングに寄与しています。

家は借りるものか、買うものか?

ところで、若いときには賃貸か分譲かで、ファイナンシャルプランを立てるときに悩まれると思います。しかし、60歳を過ぎると、明らかにわかるのは賃貸だといつかは契約を更新できなくなるのではないかという思いです。大家さんの側に立ってみれば、高齢夫婦の世帯が新たに住みたいといってきたときに、「さて」と考えてしまうことはわかります。収入の問題、保証人の問題などなど。

もちろん若いうちに賃貸に住んで、ローン返済の負担の無いうちに資産形成を行って、退職したら家を買うというのも一つの手だと思います(賃貸派のひとつかな?)。しかし、「家を買う」という行為は退職に向けて想定するものよりも、現役時代に「ローンで買うもの」と考える人が多いように思います。そのため、想定されるのは、現役時代に住宅ローンで「家を買って、退職までに完済する」というパターンでしょうか。実は、私は、あまり深く考えず、後者の「マンションを買うことで住宅ローンに長くお世話になった」分譲派でした。

退職金で住宅ローンは完済すべきか?

ただ、前述のとおり50代後半での転居は、それまでとはちょっと違って、いろいろ考えたうえでの「ダウンサイジング」としての転居です。それでもローン無しでというわけにはいきませんが、残高はかなり減っています。完済も十分可能です。そこで次回のコラムでは「住宅ローンは退職金で返済すべきか?」について、自分の考えをまとめてみます。