私の心情(51)―お金との向き合い方16-2021年、一段と「消費者の資産形成」にシフト
2021年、あけましておめでとうございます。本年もフィンウェル研究所の活動にご支援を賜りますようお願い申し上げます。
依然として新型コロナウィルスは猛威を振るっており、生活に、経済に大きな影響をもたらしています。そうしたなかでも2021年はお金との向き合い方がもう一段変化すると思っています。厳しい冬でも生命力を感じさせる常緑の木のごとく。
「投資家」から「消費者」へ
具体的には、「資産形成がより一般的なこととなり、投資信託が消費財にさらに一歩近づく」のではないかと考えています。その結果、われわれは「投資家」と呼ばれるのではなく、金融商品の「消費者」になっていくように思います。ご承知の通り、このところ英国のIFA市場に関する情報収集を続けておりますが、2018年7月にリリースされた英国FCAの「Investment Platforms Market Study、Interim Report」(全108ページ)ではInvestorという言葉は74回登場しますが、Consumerという言葉はなんと734回出てきます。消費者という言葉が、投資家の10倍の回数で登場する金融当局の報告書。そんな時代が近い将来、日本にも来るのではないでしょうか。来て欲しいものです。
1500万人がNISAを、1000万人がDCを活用する時代
2020年、確定拠出年金の加入者は企業型で748.8万人(9月末)、個人型で175.6万人(10月末)、合計で924.4万人に達しました。年間で60万人ほど増えていますから、制度がスタートして20年となる2021年末には1000万人に達するかもしれません。一方、NISAは一般NISAで1209.6万人、つみたてNISAで274.5万人、ジュニアNISAで42.1万人、合計で1484.1万人(2020年9月末)が口座を開設する制度となりました。2014年からわずか6年です。2つ合わせると述べ2500万人が利用する非課税口座。総人口1億2000万人の2割の規模です。もちろん重複する人も多いはずですから、2割というのは多すぎますが、それにしてもかなりの人がこうした非課税口座を利用する時代になってきたのです。
金融サービス仲介業と重要情報シート
2021年はここに2つの変化が訪れます。1つは「金融サービス仲介業」のスタートです。これまでの金融仲介業は、銀行業、保険業、証券業を別々に取得する必要がありましたが、新制度では一括して申請することができます。その結果、金融サービス仲介業者は、個人のお金との向き合い方で柱となる資産形成(証券業)、保険(保険業)、住宅ローン(銀行業)を扱えるようになり、個人にALM(Asset Liability Management)を提供しやすくなります。個人にしてみると、お金にかかわる生活全体を包括的に考える一助になり、もう一段資産形成が“普通のこと”になる原動力になるはずです。
もうひとつは「顧客本位の業務運営」をもう一段進展させる目的で導入される「重要情報シート」です。このシートの導入は、金融業界にはなかなか負担になることですが、個人にとっての最大のメリットは、金融機関が金融商品の目的・機能を説明する際に「自分のライフプランに照らしてどうふさわしいと考えるのか、どのようなフォローアップが得られるのか」といったことを聞きやすくなることです。それによって、資産運用が“まずライフプランを立てることから始まる”ように変わるはずです。もちろん手数料や利益相反の可能性が事前に明示されるようになれば、不安も少なくなるでしょう。
「資産形成が家電や耐久消費財を購入することと同じように普通のことになってくる時代」にさらに一歩踏み出しそうな予感がします。