私の心情(49)―資産活用アドバイス19-「IFAとは何者か」出版記念セミナーでのQ&A-その2

2020年12月1日に、金融財政事情研究会から「IFAとは何者か アドバイザーとプラットフォーマーのすべて」を上梓し、その出版記念セミナーで参加者から興味深いご質問をたくさんいただきました。今回は第2回目として手数料に関する質問とその回答をまとめてみました。なお、このQ&Aだけでは一部分しか議論していませんので、誤解を招く可能性があります。「IFAとは何者か」の本と合わせてお読みいただけますようお願いします。

Q:英国では資産残高が少ない若年層は、IFAの利用ができないのか。フィーベースでのビジネスモデルは魅力的だが、金融資産の少ない方を切り捨てるモデルではないか?

A: 資産形成中の若年層に対してビジネスを行おうとするのであれば、投資金額に対する定率でのフィーは過重な負担になりかねません。また、時間給やメニュー別の価格設定という方法もありますが、その価格でも投資金額に対して過重なものとなる可能性があります。そのため、少額で投資を行う消費者に対しては、如何にローコストでサービスを提供するかを考えていく必要があります。

その分野こそロボアドが活躍できる分野でしょう。また、IFAにとっての主戦場はある程度資産のある資産活用世代だと思いますが、そのために英国ではAIや新たな技術を開発して、アドバイスのコストそのものを引き下げる努力を金融当局がHUBになって行っています。

また、英国では、DC加入者がアドバイスを受ける場合のフィーをDC資産から天引きするシステムを導入しました。その際の引出額は、所得控除として扱うように税制優遇を行っています(一般にはDC資産から資金を引き出す際にはその年の所得として課税します)。小さな点ですが、こうした対応も行っています。

Q: そもそも手数料は運用収益で賄えるものと考えれば、期待収益率が低い日本はその分フィー水準が低くならざるを得ない。とすれば、IFAを含め運用サービス業者は海外より儲からないのではないか?

A: まずは日本の収益率が実際にはそれほど低いとは思っていないことを先にお伝えしておきます。そのうえで、運用収益が少ない環境下であればフィーも少なくならざるを得ないというロジックも否定できないと思います。ただ、「顧客の最善の利益が投資収益だけ」であるかどうかは一概に言い切れないとも思います。消費者は投資収益以外の「利益」、例えば資産を守ることとか、節税によるメリットなどを評価するかもしれません。それをもたらす資産の作り方・引き出し方もアドバイスできれば、アドバイスフィーの源泉は、一概に投資収益(期待収益率)だけが議論の対象ではないかもしれません。

Q: 日本では信託報酬の代行報酬部分がIFAの収入になるやり方があります。アクティブ投信とインデックス投信ではIFAの収益率に格差が出ます。英国では残高の1%程度がIFAの収入のイメージだとすると、日本との差はどこにあるのか?

A: 英国では、プラットフォーマーからのキックバックは認められていません。すべて顧客から受け取るアドバイスフィーだけです(もちろんプラットフォーマーは課金制度を提供していますから、顧客の資産からフィーを徴収してアドバイザーへ振り込むことはします)。プラットフォーマーも顧客から直接フィーを受け取っています。アドバイスフィーはアドバイスに対する対価なので、商品ごとにフィー水準が違うというのは、そもそも英国の方法とは違っています。手数料バイアス(顧客のニーズではなく、手数料の高いものを売ることにバイアスがかかること)の源泉が商品ごとにフィーが存在しているという点にもあります。