私の心情(276)―資産活用アドバイス124 60代都市生活者の4分の3は持ち家だった

「60代6000人の声」アンケートの分析第3弾は、「持ち家と生活全般の満足度は関連するか」に焦点を当てました。結論は、持ち家派の方が生活全般の満足度は高いということでした。

資料の全体像は、第1弾のブログ「60代の満足度と70代以降に向けた苦悩」、第2弾のブログ「60代、なんのために資産運用をするのか」、並びに一次分析のグラフ集も併せてご覧ください。

60代の持ち家比率は75%!

「60代6000人の声」アンケート(2025年)で、4回目にして初めて居住状況を聞いています。その結果、なんと74.2%の人が持ち家でした。回答者6461人はすべて人口30万人以上の都道府県庁所在都市に住んでいる60代ですから、都市部でも思った以上に持ち家比率が高いと感じました。

持ち家派の生活満足度は高い

居住状態が60代の生活満足度にどれくらいの影響を与えているかをみてみます。まず、現在の居住状態で、賃貸派(現在賃貸でこれからも賃貸、現在賃貸で住宅購入を計画の合計)と持ち家派(現在持ち家でこのまま住み続ける、引っ越しを検討中の合計)に分けて、生活全般の満足度の分布をみたのが、次のグラフです。

グラフの外円に示した持ち家派では、「満足できる」と「どちらかといえば満足できる」の合計が、全体の52.6%を占め、「満足できない」と「どちらかといえば満足できない」の合計は19.7%に留まりました。また「満足できない=1点」から「満足できる=5点」の5段階評価の平均値は3.4点でした。「どちらかといえば満足できる」に近い水準です。

これに対して、賃貸派は前者が33.2%で、後者が36.9%、5段階評価の平均値は2.9点となりました。こちらは3点を下回っていることから「どちらかといえば満足できない」水準となっています。

持ち家派が60代の生活全般において満足度が高くなっていることが分かります。

もう一つの切り口として、生活全般の満足度別に持ち家、賃貸の比率をみたのが次のグラフです。生活全般に満足できると回答した658人のうち83.1%が持ち家派だったのに対し、満足できないと回答した654人のうち持ち家派の率は55.4%にとどまっています。

賃貸派は住んでいる都市の良し悪しの判断に家賃が大きな影響を与えている

さらに、現在住んでいる都市の良いところを挙げてもらう設問では、賃貸派は「家賃・住居費が安い」ことを挙げる比率が非常に高くなっていて、持ち家派は「家賃・住居費の安さ」を挙げる人が少ない結果となりました。ちなみに、持ち家派と賃貸派の全体の人数比は、74.2%対25.8%ですが、「家賃・住居費が安い」を住んでいる都市の良いところに挙げた人では、持ち家派56.3%対賃貸派43.7%になっています。

持ち家派が家賃や住宅費の心配を相対的にしないで済んでいることから、住んでいる都市の評価に大きな影響を与えていないのに対して、賃貸派は家賃の安さが住むところの魅力になっていることを示しています。

居住状態の生活満足に与える影響力も大きい

居住状況が生活全体の満足度にどれくらい影響度があるのかを、重回帰分析を使って検討してみました。生活全般の満足度を被説明変数にした重回帰分析で、まず今回のアンケート調査で回答を得た18項目を説明変数として分し、関係が明確に見えないもの(有意水準が高いもの)を除いて10項目に絞り、再度、重回帰分析を行った結果を下の表で示しています。

偏回帰係数の大きさ順に説明変数を並べてみると、持ち家であること(居住状況)が生活全般の満足度を高めることが分かり、その影響度も比較的高いことが分かりました。

「賃貸か、持ち家か」というのは現役時代によく議論されるテーマだと思います。しかし、60代になってみると、持ち家であることが生活全般の満足度という基準でみると、非常に重要であることが感じられます。