私の心情(268)―お金との向き合い方88 NISA、2年目に向けて
一般NISAを利用されてきた皆さんは2024年末に期限が来た資金はどうされましたか。私は、年内に全額売却して、2025年の新NISAの成長投資枠での購入に振り向けました。昨年はどの銘柄に投資するのかいろいろ考えたこともあり、3月まで購入時期が遅れましたが、今年は追加投資ですので、年始の休暇のうちに指示しておきました。年初の相場は下げが続いているので、今年のスタートはあまりいい感じではありませんね。
2024年Q1、現役世代が先行して買付
さて、2024年のNISAの動向を分析しておきたいと思います。
昨年7月に、「私の心情241-NISAの残高急増はなるか」と「私の心情244-NISA、非課税期限到来資金の行方が鍵」と題して、2024年1‐3月の年代別のNISAの売買動向を分析した結果をお伝えしました。
その際のポイントは、2023年の年間の売却額が、2024年1‐3月の購入にどれだけ還流しているかでした。年代別にみると、下のグラフのように現役世代では1‐3月の買付額が23年の年間売却額を上回る水準に達しており、一般NISAからの乗り換えが進み、さらに追加の投資もかなり行われたことがうかがえました。しかし70代以上は23年年間売却額を下回る買付額にとどまっていました。
前年に一般NISAの期限到来となった投資信託などを売却して、新NISAで購入するとなれば1‐3月に買い戻すことになるだろうと想定したこともあって、この時点では、高齢層は一般NISAから新NISAに全額戻らないのではないかと懸念をしました。
9月末までに高齢層も買付額を増加
しかし、昨年12月20日に発表された2024年9月末までのデータによると、買付総額は13.8兆円と2023年の年間売却額(受取配当を含む)4.6兆円の3倍に達する水準となりました。
9月までの買付総額を先ほどのグラフと同様に、年代別にみると現役層はさらに大幅に買付額を増やしています。30代では1‐9月の買付額は1‐3月のそれの2倍以上、23年の売却額の5倍以上になっています。また、1‐3月で十分ではなかった60代、70代の買付額も23年売却額の2倍前後、80代でもほぼ同額の水準になっていることがわかりました。前のグラフと比較すると、その変化が大きいことがよくわかります。
それでも高齢層の方が全体的には23年の売却額に対して、24年の買付額がそれほど大きくないという特徴は出ているようです。新NISAになって、その活用は高齢層から資産形成層に大きくシフトしていることが覗えます。
2024年の買付総額はつみたて投資枠で5兆円、成長投資枠で12兆円台か
それは、2つの投資枠の使われ方にも出ています。四半期ごとに成長投資枠とつみたて投資枠の買付額の推移をみてみます。つみたて投資枠はQ1に1兆円の買付額に達し、Q2で1.2兆円、Q3で1.3兆円と四半期ごとにその水準を少しずつ切り上げています。積立投資の効果から毎月の投資が定期的に行われていることが分かり、また口座数の拡大に合わせてその金額が少しずつ増えています。このペースでいけば、年間5兆円程度の買付額になり、2023年の全買付額に匹敵する水準が期待されます。
一方、成長投資枠はQ1の買付額が5.1兆円と突出して、Q2とQ3の買付額は2兆円台に低下しています。Q1の買付額が大きくなっているのは、年間の投資枠を早い段階で使っていく傾向にあるほか、2023年末で非課税期間の満期が到来した一般NISAの資金が買い戻しされたことも想定されます。なお、Q4も2兆円台であれば、年間の買付総額は12兆円台に達することになります。
2つの投資枠を合計すると17兆円程度の買付額になるわけですが、これは2023年末の一般NISAとつみたてNISAの合計残高18.4兆円に匹敵する金額です。
値上がり益も大きい
値上がり益も残高の嵩上げに寄与します。2024年のデータの発表は半年ほど先になりますので、2023年のデータから値上がり益の規模感をみてみます。年間の買付額は5.2兆円で、売却額は受取配当額を含めて4.6兆円で、ネットの純流入額は6000億円程度に留まりました。ただ残高は22年末の13.2兆円から23年末には18.4兆円に増えていましたから、1年間の値上がり益は4.5兆円程度あったことが逆算できます。ちなみに22年末の残高13.2兆円に対して値上がり益は34%に相当します。
24年もかなりの値上がり益が想定されるはずです。日経平均は年間で2割程度上昇していますが、多くを海外に向けている個人投資家は、それを上回る収益率を得ている可能性があります。もし年始の18.4兆円の残高に値上がり益が20%乗っただけでも、残高は22兆円に増加します。これに買付額18兆円台が上乗せされると、残高は40兆円に達してもいいはずです。
課題は残高に影響する売却額
問題は年間の売却額です。売却があまり想定されないつみたて投資枠は別として、成長投資枠の売却がどれくらいになるかが気になるところです。
確実に売却額に計上されるのが、2024年末に非課税期間が到来した一般NISAの資産です。これは、売却されても課税口座に移管されても、NISA枠からは売却の扱いになります。もちろん2025年に買い戻されることを期待しますが、それでも一応、2024年では売却額に計上されます。
23年末の一般NISA残高は13.2兆円です。一般NISAの非課税期限が到来するのが2027年までで2024年を含めて4年分として、13.2兆円の4分の1に相当する3.3兆円がその対象と推計されます。これに2024年の値上がり分が含まれとしても、4兆円程度になるでしょう(値上がり益を20%と想定)。
それ以上に気になるのが、初年度の枠内で利益確定のためにどれくらい売却されたかです。年間を通じてかなりの値上がり益がありましたし、夏場に急落局面があって投資の怖さを嫌気したといった指摘もありました。そうしたことで売りが膨らんでいる可能性があります。
また年間投資枠が拡大したことから、普通の投資額であれば一度売却してもその投資枠の中で買い戻すことができるといった制度面の改善がかえって売却をしやすくしている可能性もあります。
もちろんそれらを加味しても投資残高は2023年と比べてかなり増えているだろうと推測されます。大きな成長をしたNISA初年度だったと思われます。
2025年も売却額が気になる
2025年も伸NISAの拡大に期待したいところですが、課題はやはり売却額の規模ではないでしょうか。
一般NISAのうち非課税期限が到来する資金がしっかりと新NISAに戻ってくるかどうかです。13.2兆円の一般NISA資金は毎年、売却されます。この資金還流がどれだけ進むかです。2024年の場合には成長投資枠での買付額の4割強が1‐3月に実施されたことを考えると、1‐3月の相場が新NISAの成長投資枠での買い戻し、特に4割以上の残高を持つ60歳以上の再投資の背中を押すかどうか気になります。年始の相場はあまり魅力的には映っていませんね。
利益確定の売りも重要になりますが、こちらの分析には2024年の確定版データの発表が待たれるところです。