私の心情(260)―お金との向き合い方85 個人資産3200兆円時代、依然預金が積み上がる

個人金融資産の動向はマスコミでも良く取り上げられますが、私が注目しているのは個人金融資産と個人が保有する土地などの資産を合計した「個人資産」です。個人資産の方が、個人の資産配分のトレンドが分かり易いと思っています。

個人の保有資産3200兆円超

国民経済計算によると、直近2022年末の個人資産は3235.5兆円でした。その内訳は、金融資産が2030.2兆円、構成比62.7%、土地747.3兆円、同23.1%など。また金融資産のうち、現金・預金が最も大きく1116.3兆円、構成比34.5%となっています。

ちなみにバブル経済のピークだった1990年は2736.3兆円でした。32年かかっても18%強の増加に留まっていますから、まさしく失われた30年だったとわかります。

なお、直近のボトムは2011年で、その時の個人資産は2658.2兆円でした。これはアベノミクスがスタートする直前という時期になります。そこでここを分岐点にして、1990年から2011年と2011年から2022年に分けて主要な資産の金額推移をみておきます。

バブル経済崩壊で土地の資産価額は半減、そこから横ばいが継続

まずは土地です。バブル経済崩壊の代表的な資産の動きです。1990年から2011年では、個人が保有する土地の価額は大幅に減少しました。実額で790.1兆円減少し、個人資産に占める構成比は54.3%から26.2%へと半減しています。

2011年以降、2022年まで土地の価額は若干の増加となっていますが、個人資産全体の伸びを大きく下回っており、個人資産に占める構成比はそれ以降もジリジリと下がっています。2022年の構成比は23.1%です。ちなみに最も低かったのは2021年の22.7%でした。

預金は依然として積み上がり

その代わりに構成比で急拡大したのは、現金・預金で個人資産に占める構成比は1990年の17.4%から2011年には32.2%へと高まりました。その間の増加額は378.9兆円ですから、バブル経済崩壊のなかで、土地から預金に資産が大きくシフトしたことがわかります。ちなみに、現金・預金が土地の構成比を上回って、No.1の資産になったのが2004年で、その時の構成比は土地28.4%、現金・預金29.3%でした。

2011年以降はアベノミクスの影響もあって株価の上昇が進んだのですが、それでも現金・預金の増加は止まっていません。この11年間の増加分の内訳をみると、個人資産が577.4兆円増加していますが、最大の増加は現金・預金で261.0兆円、増加分の寄与率は45.2%でした。金利が低いにも関わらず、現金・預金に資金が相変わらず大きく流入していることがわかります。特にコロナ禍の影響でしょうか、2020年以降の増加ピッチが高まっているように見受けられます。

ちなみに個人金融資産に占める現金・預金比率は50%超でなかなか減らないことを指摘するイメージが強いのですが、実額の動きをみると、減らないのではなく、かなり積み上がっていることがわかります。

この11年では有価証券は7割弱の伸び

バブル経済崩壊のもうひとつの特徴は株価の下落ですが、有価証券等は1990年から2011年までの間に75.7兆円減少して、構成比も9.5%から7.0%へと低下しました。

しかし2011年から2022年までの期間は、それまでとは大きく変わりました。個人資産は、この11年で577.4兆円、21.7%拡大していますが、その間で最も伸び率が高かったのが有価証券等です。2011年比の増加額は133.3兆円、67.7%増でした。増加額に占める構成比は23.1%と高水準です。アベノミクスをはじめとした施策が株価上昇に影響してきたことが明確です。