私の心情(257)―資産活用アドバイス111 資産の取り崩しに関するWeb Siteの情報

資産の取り崩しに関して金融機関がどんな情報を提供しているのかを各社のホームページから拾い出してみました。資産の取り崩しに関してコラムなどで情報提供している金融機関は多くあります(私が執筆したコラムもあります!)が、ここでは①シミュレーションなどのツール、②取り崩しのシステム・サービス、③定率の取り崩しを想定した分配金を提供する投資信託といった金融商品、をまとめています。なお、10月20日現在の情報で、かつすべてを網羅しているわけではありません。また評価も私見であることをあらかじめご承知おきください。

資産寿命を計算するシミュレーション

資産の取り崩しシミュレーションは多くの金融機関でホームページ上に紹介されています。そのほとんどが、保有資産、取り崩し期間(または現在年齢や取り崩し開始年齢)、運用収益率、月額取り崩し額の4つのうち3つを入力することで残り1つを計算するという仕組みを提供しています。典型的なものはWealth Advisorの「金融電卓」における「資産を取り崩す場合」の計算です。毎月の受取額、受け取り期間、想定利回り、必要資金額の4つの数値から3つを選んでそれぞれの関係式を使って残りの1つを計算できるようにしています。

運用会社の提供するこうしたシミュレーションでは、大和アセットマネジメントの「取り崩しシミュレーション」セゾン投信の「取り崩しシミュレーション」があり、これらでは想定利回りを入力する際に、資産クラスや自社の投資信託の実績値を提示することで、より現実味を持たせようとしています。

また野村アセットマネジメントの「取り崩しシミュレーション」では、保有資産、取崩開始年齢、月額取崩額を入れ、運用収益率を選択(2つ選択できる)すると、年齢別の資産額がグラフで示され、これで資産寿命を示すようになっています。なお、同社のシミュレーションは途中で取り崩し額の変更も想定できる点が特徴です。

想定リターンに想定リスクも設定して(参考値でリスクも選べるようになっている)、資産額の変動を確率で示す方式を取っているのが三菱UFJアセットマネジメントの「取り崩しシミュレーション」です。

以上は、取り崩しを定額で行うことを前提にしたシミュレーションです。

定率引き出しの設定も

定率取り崩しをシミュレーションに取り入れているところもあります。三井住友DSアセットマネジメントの「資産設計シミュレーション」では、年齢、資産額、運用利回りを入れ、取り崩しは定額と定率で計算し、年齢別の資産残高を比較するシミュレーションを提供しています。資産寿命のみを示す方法ですが、定率のアイデアも取り入れている点が特徴です。

三井住友銀行の「資産寿命シミュレーション」では、年齢を入力すると、金融資産3000万円、運用利回り0%、年間取り崩し額120万円で計算した結果が自動的に算出されます。これは運用しない場合の数値としてまずは明示し、ここから自身で金融資産、運用利回り、年間取り崩し額または年間取り崩し率を選択することで、年齢別の資産額と年間取り崩し額、累計取り崩し額を表示するよう工夫されています。

シミュレーターではありませんが、動画で定率取り崩しの効用を説明しているのが、キャピタル・グループの「人生100年時代を生き抜くための、定率取り崩し運用」です。自社の投資信託を実例として説明しているとはいえ、定率取り崩しにフォーカスしている点は特徴といえます。

証券会社の定期売却サービス

資産の取り崩しを実際に実行しようとすると、例えば、運用している資産総額のなかから毎月、毎年、必要金額を指定して売却の注文を出すという面倒な作業を伴います。そこで証券会社では、売却を自動で行う「定時売却サービス」を提供しているところもあります。

例えばSBI証券では、「投資信託定期売却サービス」があり、毎月、奇数月、偶数月といった引き出しの頻度の設定ができ、その都度定額で引出額を決めておく方法が可能になっています。なお、同社のホームページによると、2025年中にサービスを拡充する予定で、定額の他に定率の売却も可能にし、NISAにも対応するとしています。

既に定率の売却サービスを提供しているのが楽天証券の「定期売却サービス」です。投資信託を対象として、NISA口座にも対応している他、受け取り方法も金額指定、定率指定、期間指定が可能になっています。なお期間指定は最終受け取り年月を指定してそれまでの期間で均等口数で売却する方法で、定口指定と同様の考え方となります。

マネックス証券では、将来認知症になった場合に備えて保有株を指定した株数毎に定期的に売却できるサービス「たくす株の定期売却機能」を提供しています。「たくす株」というサービスは、認知症発症後に保有する有価証券を一分売却して資金を引き出せるようにし、また相続が発生した際には受取人を指定できるようにしたもので、これに定期売却サービスを付加しています。

また大和証券では、ファンドラップを対象にして「定期受け取りサービス」を提供しています。上限金額など細かいルールはありますが、定額での取り崩しを前提にしています。SMBC日興証券では、投資信託の定期受取サービスがありますが、受取額は金額指定か口数指定だけとなっています。

分配金を活用した定期売却サービス=分配型投信

投資信託の分配金の払い出しを定期売却サービスだと考えると、分配型投資信託は取り崩しを内包した金融商品とみることができます。分配型投資信託に対しては、いわゆる「タコ足」批判が強くありましたが、「タコ足」そのものが取り崩しサービスというわけです。

とはいえ分配型投資信託を手放しで評価することはできません。分配金の設定が下方硬直的で相場環境が厳しい局面でも、分配金の水準をなかなか下げられないという課題を抱えています。これはいわゆる定額引き出しにおける「収益率配列のリスク」をもたらしかねないわけで、この点には改善の余地があると思われます。そこで、分配金の水準を基準価格に連動させて決める方針を明確にしている投資信託も登場しています。

アライアンス・バーンスタインの「予想分配金提示型」投資信託は、目標となる分配金額が、基準価額の水準に応じてあらかじめ提示されているもので、例えば基準価額が1万2000円以上1万3000円未満であれば分配金は1万口当たり300円、1万3000円以上1万4000円未満であれば400円、1万4000円以上であれば500円といった具合に予め決めておいて、決算期ごとに基準価額がどのレンジになったかによって分配金が決まる方法を取っています。

また三井住友DSアセットマネジメントでは、「3%目標受取型」といった分配金を基準価額の一定率に設定して、毎回分配金額が変わる投資信託を設定しています。野村アセットマネジメントにも「年3%目標分配金、年6%目標分配金」といった分配金のターゲットを設定した投資信託もあります。

アドバイザーの力が必要に

オンライン証券でのシステム対応や分配型投資信託を活用すれば、比較的簡単に資産の取り崩しができそうに思えますが、実際には面倒な面も多くあります。そもそも取り崩しをどう設置したらよいかといった設定は資産形成の設定よりも難しいものです。さらに、オンライン証券のシステムは売却の設定を投資信託ごとに決めるため、どの投資信託からどれくらい売却すべきかといったことを決めなければなりません。

分配型投資信託を使う場合には、資産形成から資産活用に移行する段階で、保有している投資信託を分配型に乗り換える必要が出てきます。その際に乗り換えに伴って一度売却益を出すことで、支払い税金分だけ投資効率を下げる懸念も出てきます。非課税口座であるNISAを使えばそうした懸念は軽減されますが、今度は年間360万円とか生涯1800万円といった制度上の非課税上限額が設定されていることで乗り換えそのものに制約がかかることになります。

こうしたことを考えると、全体像を見極めて総合的なアドバイスが不可欠になるだろうと思います。