私の心情(227)―資産活用アドバイス93-「60代6000人の声」、2024年の概要と3年間の動き
3月18日に「60代6000人の声」アンケート調査の結果を発表することができました。5年前にフィンウェル研究所を設立して以来続けているアンケート調査ですが、当初2年間はコストを抑制するために小規模で地方都市移住だけをテーマにしていました。2022年からは規模を6000人台へと拡大し、地方都市移住に加えて資産、収入、生活費、満足度などもカバー、さらに2023年からはそれぞれの時節の特別テーマも設問に入れるようにしています。
2024年の調査結果概要
「60代6000人の声」の調査の全体の分析結果はこちらをご覧いただくとして、概要は以下の通りです。
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アンケート回答者の属性
- 201-400万円が年収、年間生活費ともに最多帯(27.5%、43.4%)だが、平均値は年収の方が生活費よりも多い。回答者6506人の収支は恵まれている。収入では7割が年金を頼りにし、生活費では5割が「食費が最もかかる費用」と認識。
- 資産額では500万円未満層(資産無しを含む)が39.7%と最大。その次が2001ー5000万円層で18.2%と二極化している。回答者の7割が「現有の資産で何とか生活はカバーできる」と考えている。資産延命策は勤労、生活費抑制、資産運用の順。
- 7割が有配偶、3割が子どもと同居、1割が親と同居。
- 64歳から年金を受給する世帯が過半に、65歳になると現役世代が一気に減少する。
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移住
- 3大都市圏居住の6人に1人が移住を検討している/していた。
- 4分の3が移住して良かった。その理由としては半数が生活費の削減を挙げる。
- 生活全般の満足度が高い都市ほど、退職後の生活場所として推奨する比率が高くなる(上位は福岡、松山、熊本、富山、静岡、神戸、高松、奈良、大分)
- 人口100万人以上の都市は医療・交通の便といった都市生活機能を、30万人以上では食事・気候の楽しさ重視の傾向
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生活全般の満足度など
- 満足度の水準は過去2回と変わらず、資産水準には「どちらかといえば満足できない」が、そのほかの満足度を合わせて生活全般の満足度は「どちらかといえば満足できる」水準に。
- ただ、重回帰分析でみると、資産水準の満足度は、最も生活全般の満足度への影響力が大きい。
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資産運用
- 加齢とともに近視眼的な傾向が徐々に強くなる。
- 43%が資産運用、しかし資産寿命延命策としてみているのはわずか4割。
- 新NISA口座開設は46%、投資家のうち8割が新NISAを利用。
資産の取り崩し、新NISAの活用状況
時節の調査テーマとして2024年の調査では、資産の取り崩し、70代の生活イメージ、そして今年始まった新NISAの活用状況を聞いています。資産の取り崩しと新NISAの活用に関しては、既にコラムでまとめていますので、ご覧ください。
3年間の変化:ほとんど変わらない水準
ところでそもそも「60代6000人の声」は、統計データとしては、60代の都市生活者のみを対象として調査を行っていることから、人口や年齢といった形でのデータの割り付けを行っていません。そのため出現率というよりは、そのグループの特色を示すデータと呼んでいただくと良いと思います。その視点から過去3年間の調査結果を見ると「60代の都市生活者に大きな変化が起きていない」というのが、結論として言えそうです。
そのため、2023年に行った金融リテラシーと金融詐欺被害の分析など、それぞれの年の特別テーマの分析の結果も、多くの場合それほど変化しておらず、現状でもまたこれからも重要な示唆を与えてくれると想定しています。