私の心情(20)-お金との向き合い方ー3%運用は可能か?
10年間の返金収益率3%以上は全体の何割あるでしょう?
思い込みとは違う投資の実態
このところセミナーでは、3%運用の可能性について言及することが多くなっていました。というのも、長く「3%運用、4%引き出し」を標榜する中で、「本当に3%運用なんてできるの?」という疑問をよく耳にしたからです。
私には、それができるかどうかを“占うこと”はできません。でも、一般の人が思っているほど、投資信託での運用成果は悪くなかったということを示すことはできると思っています。そこでいつも使うのが、投資信託の直近10年間の運用成績です。モーニングスターの投資信託検索サイトを使って計算した直近10年間の投資信託のパフォーマンスは、予想以上に高いものでした。具体例を、表に示していますので、それをみながら読んでください。
一番左の2019年11月19日に計算をした数値は、近著「老後の資産形成をゼッタイ始める!と思える本」(扶桑社)の執筆用に計算しています。投資信託(ETFを含むが、確定拠出年金やSMA専用ファンドを除く、以下同様)の総数は5126本あって、そのうち、10年以上の運用実績を持った投資信託は1502本でした。この1502本のうち、直近10年間の年率収益率が3%以上だった投信信託は1206本、その比率は80.3%。さらに0%以上の収益率をもたらした投資信託は、1439本、95.8%。ご承知の通り、基準価額ベースで行っているため、信託報酬を差し引いた実際に投資家が得られるリターンで計算しています。
ここからわかることは「10年以上の運用実績を持つ投資信託の直近10年間の運用パフォーマンスはその8割が3%以上だった」、「10年保有するとほとんどの投資信託の収益率はプラスになっていた」ということです。もちろんどんな場合にも投資は10年持てばこういった成果が得られるということを保証するものではありません。しかし、多くの投資初心者が「投資は儲からないもの」、「ギャンブルみたいなもの」と思っているのとは、かなり違った結果だということは言えると思います。
投資信託の収益率、8割が年率3%以上
さて問題は、最近の「新型コロナウイルスの世界的蔓延をきっかけとするこの急落後でもいえるのか」ということです。2019年11月の時点では、日経平均は2万3000円台でした。3月中旬では、それは7000円ほど下回って、1万6000円台です。おおざっぱに3割ほど下落しているわけですから、投資信託の損失もかなり出ているはずでしょう。
そこで、同様の計算を2月と3月でも行ってみました。驚いたことに直近10年間の平均収益率3%以上となった投資信託の数はほとんど変わっていないのです。3月22日に計算した場合では、10年以上運用を行っている投資信託のうち82.3%が直近10年で年率3%以上の運用成績を上げているのです。2月中旬時点と比較すると、確かに日経平均は7000円以上下落しているのですが、投資信託が分散された金融商品であることに加えて、10年前の日経平均は1万1000円強でしたから、そこから考えるとまだ49%ほど高い水準なので、しっかりと収益を確保しているということです。
われわれは行動経済学が指摘する「行動バイアス」にかかりやすいものです。株価はいつも直近高値と比較してしまいがちですが、10年という期間での資産形成を考えてみるとその力は非常に大きいものです。もちろん今後も価格が上昇すると保障するものではありませんが、勝手な思い込みで悪い方、悪い方へと見てしまいがちですが、意外にしっかりしていることも理解しておく必要があります。
皆さんも折々にこの計算をしてみませんか。