私の心情(173)―お金との向き合い方61-投資パフォーマンスに対する認識ギャップ
なぜ資産運用で儲からないと考えるのか
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という表現がありますが、恐れているものは意外にその正体を知ると「なーんだ」ってことだったりしますね。投資もどこかそんな気がして仕方がありません。長く資産形成や資産活用のお話をさせていただくなかで資産運用の大切さをお話していますが、それでも多くの方の資産運用に対する認識は「損をする可能性があるのでちょっと・・・」というもののように感じます。
損失リスクが非常に高いと誤解
実際、2021年6月に公表された金融庁の「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」によると、投資未経験者3645人のうち、「資産運用という言葉からあなたはどのようなイメージを持ちますか」の設問に対する回答(複数回答)は、第1位が「専門的な知識を要する」40.4%、第2位が「損失を被るリスクが非常に高い」32.0%、第3位が「少額の投資でも始められる」22.9%となっています。第1位は中立的な表現ながら含意はマイナス・イメージ、第2位はマイナス・イメージ、第3位はポジティブ・イメージといっていいでしょうか。
実際「損失を被るリスクが非常に高い」というイメージを持っている人は多いようです。このコラムを読んでいただいている皆さんは、投資に馴染んでいらっしゃる方も多いと思いますから、こうしたイメージは少ないかもしれません。ただ、セミナーなどで聞いてみると意外に多くの方が「投資は儲からないものだ」と思っていらっしゃいます。
私はセミナーで、「10年以上の運用実績がある投資信託は何本くらいあると思いますか」、「そのうち直近の10年間の運用実績が年率換算して3%以上の投資信託はどれくらいあると思いますか?」という質問をよくさせていただいています。その回答は、先の金融庁のアンケート調査と同様に、運用パフォーマンスをかなり過小評価したものです。例えば、10年以上の運用実績のある投資信託は500本くらい、3%以上の年率収益率の投信は10本くらいといった回答もありました。
10年以上運用する投信の3分の2が年率3%以上のパフォーマンス
セミナーの前日には必ずその投信のパフォーマンスデータをモーニングスターの「詳細条件でファンドを検索」というサイトで確認して、登壇するようにしています。直近のデータ(2023年2月21日12時時点での検索結果)は表のとおりで、10年以上の運用実績のある投資信託1726本のうち、直近の10年間の年率換算収益率が3%以上ある投資信託の本数は1147本と66.5%に達しています。10年以上の運用実績のある投資信託の3分の2が年率3%以上の収益率をもたらしているわけです。
ちなみに同様の投信のパフォーマンス検索サイトはいろいろなところから提供されているので、試してみるといいでしょう。例えば、一般社団法人投資信託協会の「投信総合検索ライブラリー」ではすべての投資信託が対象となっています。また楽天証券の検索サイト「投信スーパーサーチ」では楽天証券で取り扱っている投信だけが対象ですが、過去20年の長期のデータでも分析できるのが特徴です。
もちろんパフォーマンスは常に変わるもの
とはいえ、マーケットの変化は「3分の2くらいの投信が年率3%以上の運用を続けている」という実績も変えています。わずか半年の間に、年率3%以上の運用実績のあった投信の構成比は8割以上から6割以上に低下しています(グラフ参照)。
2012年夏場の日経平均は9000円前後でしたが、2013年に入ると11000円台になり、後半には13000円台へと上昇していますから、当然のことながら10年前の発射台が高くなった分、日経平均に影響を受ける投信のパフォーマンスには下押し圧力がかかります。10年間、20年間のパフォーマンスも常に担保されているわけではありません。
投資収益に対する認識ギャップの解消が重要
「投信が常に3%以上のパフォーマンスをもたらす可能性が高い」というつもりはありません。ただ、多くの消費者が「投資は儲からない、ほんの一握りの金融商品しか儲からない」といった認識を持っていますが、実際の数字をみると違っていることを示し、認識のギャップを正すことは重要なことだと思います。一括投資をした場合でさえ10年、20年という投資期間で考えると、想像しているよりも儲かる可能性が高いことが数字で示されています。これを積立投資で行えばさらにパフォーマンスは良くなる可能性が高くなります。データを確認することは重要です。幽霊ではなく、すすきの彼はであることを知ることで無用に恐れることはなくなればそれはうれしい限りです。