私の心情(149)―地方都市移住47-移住後の職探しのサポート体制
「私の心情112-移住後の就職戦線(長崎)」で、移住後の職探しの苦労話を紹介いたしました。その時に感じたのは、東京、大阪、名古屋から地方都市に移住した人は、地元で仕事を探すのはなかなか大変だということでした。特に大企業に勤めていた人の専門性は、地元企業では評価できず、「オーバースペックだ」というギャップがなかなか払拭できない姿を垣間見ることになりました。
半年ほどそんなことが頭の片隅に残っていたなか、金融庁でこの分野の担当をされている方とお話をする機会に恵まれました。
人材マッチングも金融庁の仕事
なんで金融庁が地方移住なの?って思われる方も多いと思います。ちょっと調べてみると、2018年3月に金融庁が「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を改正して、その他の付随業務としてコンサルティング業務、ビジネスマッチング業務に、新たに「人材紹介業務」を加えました。その後、内閣府が主導している「先導的人材マッチング事業」とか「プロフェッショナル人材戦略拠点」の事業が推進されて、現在、金融庁のなかには「人材マッチング推進室」という組織もあります。
地域経済を活性化するために「地域経済活性化支援機構」、通称REVIC(レビック)という組織があって,そのなかで「地域企業経営人材確保支援事業」が行われています。簡単に言えば、大企業から地域の中堅・中小企業への人材の流れを作り、地域経済の活性化を促進させようという企画です。
その柱になるのが、レビキャリ(REVICarrer)と呼ばれる人材情報マッチングシステムです。2021年10月にスタートしたこのシステムですが、概要はグラフを見ていただければわかりやすいと思います。大企業で働く人のなかから地域企業で活躍してみたい人が登録し、ここに地域企業からの依頼を受けた地域金融機関が求人案件を登録することでマッチングが進むというわけです。ここに地域金融機関がかかわることから金融庁もその担当者を置いているというわけです。というか、地域金融機関の生き残る道として、地域の商社機能、人材紹介機能が注目されているということでもあります。
求人企業の掘り起こし
組織の経緯やコンセプトはともかくとして、退職を機に地方都市移住を考える人にとってのメリットは何かを整理してみます。
まずは、地方にそうした企業があるのか、採用する意欲はあるのか、求める人材の評価ができるのかといった求人側の問題です。長崎に移住された方のコメントにもあったように「オーバースペック」という“拒絶の言葉”はなかなかインパクトがありました。
地域企業側が実際にどんな人材が必要なのかをわかっていないことが多く、求人情報そのものがあまり具体化できていないことが大きな課題だという認識は既にかなり共有されているようです。そこで地域金融機関がその地元での信頼度の高さを活用して企業とレビキャリの橋渡しをする役目を担うことになり、さらに46道府県に内閣府側の機関としてプロフェッショナル戦略人材拠点が設けられています。
採用企業に対する支援金も用意されています。このレビキャリを活用して人材を登用した地域企業は、人材が転籍した場合には1人当たり500万円を上限に給付金を受けられることになっています。実は雇用契約型の兼業・副業も対象となっており、こちらの場合には1人当たり上限200万円が給付されますから、企業側にとってはメリットがありそうです。なお、ちょっと気になるのは採用された人材は年収600万円以上が要件とされていますから、この点は普通の社員というわけにはいかないかもしれません。
地方都市移住者へのメリット
もちろんこの制度を活用する側にもメリットがあります。何よりも職を探せるチャンスが広がることがメリットですが、それ以外にもレビキャリに登録すると、スキルセット、マインドセット、定着化、アウンセリングなど21のプログラムが無料で受けられます。もちろん登録したからといって面接や研修を受けなければならないといった義務はありませんので、登録だけして放っておけばいいので、ある意味で、ちょっと地方都市移住を考えている人が気楽に登録だけするのもいいかもしれません。
実はレビキャリへの登録が従来は大企業の人事部が一括して行うことに限定されていました。これだと、大企業内のルールがきちんとされていないと、登録するということが“いらない人材”と思われたり、リストラに使われたりするのではないかといった疑念も持たれかねませんでした。
レビキャリ登録サイトにアクセスしてみた
それが、今年9月から個人で登録ができるように改善されたことで、私も注目した次第です。早速、登録申し込みサイトにアクセスしてみましたが、必須入力項目は13項目で、一般的な項目以外に注目したのは「退職日/退職予定日」の欄があることです。所属企業名を記入する欄には、“退職している人は直近の企業名の他に退職日を記載するように”と指摘している点は意識的だと思います。退職後6か月以内といった要件があるとのことなのでその点は要注意です。
なお、このサービスは大都市の大企業から地方の中小企業への人材の紹介を柱にしていることから、大企業に勤務しているまたは勤務していた人が対象です。大企業とは資本金10億円以上または従業員数2000人以上の企業ということですから、なかなかハードルは高い気がします。さらに前述通り、転職後の年収が600万円以上を想定していることもありますから、限られた人材を対象にしているということもいえるかもしれません。ちなみに、私は退職してから1年以上経過していますから、対象外でした。